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東京
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東京都現代美術館で「日本現代美術私観:高橋龍太郎コレクション」展が開幕しました。精神科医である高橋龍太郎氏(1946-)が1990年代半ばより収集をはじめたコレクションは現在まで3,500点を超え、質・量ともに日本の現代美術の最も重要な蓄積として知られています。本展はその中から115組の作家の作品を6つの章に仕立てた構成で辿る展覧会です。
1995年に開館した同館と、1997年から本格的に収集を始めた高橋氏、その両者のコレクションは同時に成長してきた「双子」のような関係にあると担当学芸員の藪前知子氏はいいます。同館がこれまで見せてきた日本の美術史に違う視点を入れられるのではないかと考え、本展覧会のタイトルを「日本現代美術私観」としたそうです。ひとりのコレクターが捉えた現代の日本の姿、そして現代美術史のハイライトをご紹介します。
展示風景
敗戦の翌年である1946年に高橋氏は誕生しました。第1章である「胎内記憶」では、高橋氏が本格的に収集をはじめる前、若い頃に影響を受けた作家や、同館が所蔵する中原實らなどの作品が並びます。
全共闘運動が広がった60年代後半を東京で過ごしていた高橋氏は医学部に入学した一方で、映像作家を目指していました。しかし、自身の作家としての才能に区切りをつけ、医学の道へ進むことに。そして、クリニックを開業後、90年代半ばに草間彌生の作品を購入したことから、高橋氏は「コレクター」として美術界との道を再び交差させることになります。
第2章は高橋コレクションの代名詞ともいえる自画像的な作品が展示されています。「戦後」が終わり、経済的発展を遂げながら日本の現代美術もグローバル化していった時代。この頃にデビューした村上隆の《ズザザザザザ》(1994)や会田誠の《紐育空爆之図(にゅうようくくうばくのず)(戦争画RETURNS)》(1996)などが展示されています。
展示風景より中央の作品:会田誠《紐青空爆之図(にゅうようくくうばくのず)(戦争画RETURNS)》(1996)
彼らは広がりを見せる日本美術界の中で「現代美術とはなにか」「現代美術を日本で制作するとはどういうことなのか」を向き合わされた世代であると藪前氏はいいます。また、高橋氏は自身のコレクションを「若い世代の叫び」と呼び、彼らの作品を通して表される社会に対する批評的な「眼差し」は高橋氏に大きなインスピレーションを与え、コレクションの方向性を決定づけるものとなりました。
西尾康之《Crash セイラ・マス》(2005)
展示風景
第3章では、高橋コレクションの核とも呼べる「人間」を描いた作品に焦点があてられています。